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「八甲田山死の彷徨」と「剣岳 点の記」と。 [考]

お正月にNHKで気象についてのおもしろい番組をやっているのを偶然みまして。
偏西風が起こる仕組みを、地球の模型と空気(煙をまぜる)で実際にみせてくれたりしていて、地味~な番組だったわりには、なかなかおもしろかったのですが。
その中で、大陸からの寒気、いわゆる冬将軍についての話をしていたときに、日本における最低気温は旭川でマイナス41度(だったっけ?数字の正確さは微妙です)、観測以来いまだに破られていないこの記録が出たとき、北海道上空で猛烈な低気圧が居座っていて、それが東北にも流れ出し、まさにそのとき、八甲田山で行軍していた陸軍兵士たちが大遭難した事件」が起きたんですね・・・ という話をして。
あぁーそうなんだ!あの遭難事件のときに出た記録が、その最低気温が出たときの寒気が作ったものなんだ!と、私の頭の中ではじめてその二つがつながりました。

それじゃあ歴史に残る大遭難事件も起こるべくして起こったんだなぁ、と感心していたら、パパさんが「新田次郎の小説読んだことある?」と。「いや、ちゃんと読んだことない」と返事したら、おもむろに自室にひっこんで 数分後に「はい」と 年代ものの文庫本が出てきました^^; パパさんの部屋はほんまに、ドラえもんの四次元ポケットもびっくりですな。(実際、ドアを開けると4次元空間かと見まごうほどのカオスでございますよ・・・中にいるときに地震きたら間違いなく圧死するぞ^^;)

ともあれ、興味を持ったときこそ読み時ということで、さっそく「八甲田山死の彷徨」を読みました。
年代ものなので文字が小さいけど、そこはまだ老眼がきていない私、一気に読んでしまいました。
日露戦争開戦をひかえ、寒中行軍の経験がない日本軍が、厳冬の八甲田山でそれをやってどんなもんなのかデータをとろう、で、ふたつのグループにそれぞれやり方を任せて競争させよう、という目的で 無茶な行軍計画ができあがり。
青森から入った中規模隊は歴史に残る大遭難、一方弘前から逆ルートをたどった小規模隊は壮絶な行軍の末全員生還・・・しかし、遭難した人たちがかわいそうだという世論を封じるために、上層部は遭難した人たちを英雄扱いして世論をなだめようとする。なので、苦労して生還した人たちは、遭難死した人たちと同じような思いをして帰ってきたにもかかわらず、たいした評価もされない。
「彼らの尊い死のおかげで、ついに軍が動き、厳寒時の装備が見直されることになったのだ。彼らは英雄だ」って感じで。

・・・実はこの年末年始で、パパさんがトルネに録画したまま半年ほど観ていなかった「剣岳 点の記」という映画を ようやく観たのですが。
これもまた、軍の上層部から、前人未到の山である剣岳に、ライバルである「日本山岳会」より絶対先にのぼれと命じられた主人公が 壮絶な困難の末に登頂に成功して、でも目的だった「三等三角点」は置けず、しかも頂上にはさびた錫杖があって、昔修行僧が登っていたことがわかり、「初登頂」「三等三角点」が目的だった上官からはまったく評価されないで終わる・・・という内容。

・・・なんとも、このふたつのお話、むちゃくちゃ似てるんですけど。って思いました。

剣岳のほうは、映画だというのもあるのか、ともに登頂をめざしたゆえに登頂成功の偉大さがわかっている日本山岳会から「初登頂おめでとうございます」というメッセージがあって、まぁきっと「わかってくれる人はいる」みたいな落ちで 溜飲を下げる、といった話になってるんですが 新田次郎さんの小説ではそんな救いもなく。それどころか、生還した小規模隊の人たちも2年後に開戦した日露戦争で半分戦死してしまうというのが あとがきで紹介されています。

実際に苦労する人のことをまったく考えない上官がいて、その命令に逆らえない中間管理職的な立場の人がいて、壮絶な苦労をして命令を遂行したにもかかわらず、上が描いていた構図にあてはまらないからという理不尽な理由で、まったく評価もされない。

命令を出す側が軍ってとこまで、おんなじです。

私は女性だからでしょうか、
こういうのを読むと、猛烈にばかげてると思います。

無謀な命令にしたがって雪山で遭難するぐらいなら、したがう前に断固反論するべき。
それにより退職、あるいは自決をせまられるなら、そこで死ぬほうがよっぽどいい。

・・・と思えるのは、私が終戦後の民主主義な時代に生まれ育ったからこそなんでしょうけど。

わたしは、自分が絶対に間違っていると思うことに、どうしても従わなくてはならないことなんてないと思います。
理不尽だけど従うしかない、という考えにだけは、同調したくありません。
あ、それはもちろん、反抗することによって自分以外の人に迷惑がかからないという前提が必要ですが。
(私がいやだといったら100人死ぬとか言われたら、そりゃ簡単にいやだとは言えません。)

八甲田山や剣岳で壮絶な思いをした人たちを馬鹿にするのでは、もちろんありません。逆にその行動には敬意を覚えます。
だけど、私がその立場だったら、その道は選びたくない。
「反論しても無駄」かどうかを、反論する前に決めたくはないです。

・・・といえるのもすべて、平和な世の中に暮らしているからですよね、そうです、それは承知しています。
当時の状況では到底無理な話だった、そうなのでしょう。
でも。

ノーベル平和賞を受賞した中国の方は、無謀だとわかっていても 「今の中国はおかしい」って声を上げたんですよね。
他にも、歴史に名を残していないけど タブーにあえてはむかっていって 人知れず消えていった人は 今までの歴史の中にたくさん、たくさんいるはず。

もし、私がそういう状況においこまれたら、
私はやっぱり 「おかしい」って声を上げて 消えていくのをよしとしたい。
・・・でも、消える前に できる限りのアピールはしたいですけどね^^;

今朝はちょうど 「冬将軍」が 日本をすっぽり覆ってしまう日だそうです。
氷点下で真っ白な日本列島の気象画面を見ながら、
今とは比べ物にならないほど脆弱な装備で 山の中で凍り付いて死んでいった人たちのことを思いました。

まぁこのへんのことは非常にデリケートな話題ですが。。。
ある意味、靖国問題にも通じるものがあるわけで。
いろんな考え方があっていいわけだし、これはあくまで私の考えです。
おまえはまちがっとる!こっちが正しい!という反論は、勘弁してくださいね。
異なる価値観の存在を尊重する。それこそが、上のふたつの小説の上層部に欠けているものなんですから・・・。


 

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